卓球部の人は、野球部ほど素振りをしない。

公園や家の前で素振りをしている野球少年は何度も見たことがあるが、卓球少年・少女が素振りをしているのは生まれてこの方一度も見たことがないです。

自分自身、学生時代は自主練での素振りは、卓球始めたての1ヶ月くらいしかしてませんでした。

 

しかし今になって、実は野球以上に、卓球は素振りが重要なんじゃないかと思うのです。

 

まず、前提として、部活などの練習時間は、素振りにあまり多くを取られるべきではないと思ってます。対戦相手がいる時間というのは貴重で、素振りは自分だけでもできるからです。

 

で、大人になって、一人の時間でよく素振りをするようになったわけですが。

そこで初めて気がつきました。

 

素振りはめちゃくちゃ難しい。

 

ただ何も考えずに振るだけならもちろん簡単です。

しかし、正しい素振りはまったくできていないことに気づきました。

 

俺が意識しないとできないこと一覧

・正しい体重移動

・打つ瞬間まで腕も手首もリラックスできているか

・打つ瞬間に前腕を使えているか

・バックハンドとフォアハンドでラケットの握りをシフトできているか

・顔の角度は平行になっているか

・脚はしっかり広がっているか、膝が曲がっているか

・腰を使えているか

 

ただ止まって素振りをするだけでも、意識しないとできていないことが、これだけあります。自分が気づいてないだけでもっとあるだろうけど。

 

さらに、1つを意識したら、前に意識してたことができなくなったりもします。

 

さらにさらに、これらを意識しながら、野球とは違い卓球は移動しながら打ちます

ボールの高さや、飛んでくる位置によって打ち方も変わってきます。

 

これだけ意識することがある中で、なるべく本番に近いシチュエーションで、様々なバリエーションの素振りをします。

ベリー難しい。まじで。

 

以前、海外に来て1ヶ月まったく卓球ができなかったときに、フットワークしながらの素振りだけをやっていたことがあります。

 

そしたら、1ヶ月球を使って練習していたときより上達しました。

 

いや、これほんとに。

 

じゃあ、なんで素振りは、時に球を使ったトレーニング以上に効果を発揮することがあるのでしょう。

 

それは、素振りは正しい卓球細胞を作るからだと思っています。

なんか、いきなりスピリチュアルっぽくなってきたぞと思った人、ちょい待ってください。

 

卓球細胞を作るってのがどういうことかというと、「意識しないとできないこと」を「無意識にできるようにする」ために、何千回、何万回も繰り返して、そのための神経細胞を増殖させる必要があるということです。

(吃音改善研究会「神経細胞の仕組み」より引用)

 

それについてわかりやすい記事が、ピアノの記事で書いてありました。

指を速く動かすことができるピアニストは、専門的な音楽訓練を受けたことの無い人に比べて、この指を動かす神経細胞が多いことが報告されています。~中略~ さらに、これらの細胞の数は、「何歳からピアノを始めたか」、「毎日何時間練習したか」に比例するようです

(PTNA「第05回 身体が動く仕組み (4)指を速く動かす脳の仕組み」より引用)

この記事によると、練習を始めた年齢練習時間に比例して、指を動かす神経細胞が増え、神経細胞が多い人ほど指を速く動かすことができる、ということが実験により観測されています。

 

「身体で覚える」とはよく言いますが、これは、その動き専用の神経細胞が増えるということで、子供ほど増える量が多いとのこと。

これは卓球業界でよく言われる、子供の頃から始めた人間が強いということとも一致します。

彼らは子供の頃、すでに正しい身体の使い方での卓球細胞が大量に作られているのです。

 

そして歳をとると、神経細胞の増殖スピードは遅いので、「繰り返し」の回数が重要になります。

素振りで、体重移動や筋肉の弛緩と緊張、手首や指などを「意識して繰り返す」ことで、段々と正しい卓球神経細胞が成長していき、無意識にそれらができるようになり、上級者の動きに近づいてくるのではないでしょうか。

 

しかし、球ありの練習だけだと、どうしても球を打つことに集中してしまい、身体の使い方への集中は散漫になってしまいます。

そんで、間違った身体の使い方を覚えた神経細胞が増えてしまうということに・・・。

 

そういう意味で、卓球の動きで意識すべきことを、既に無意識にできちゃうレベルの人は、素振りより身体作りとか別のトレーニングに当てていたほうがいいかもしれないです。

 

ただ、そのレベルの人って、相当な実力者だと思います。

つまり、卓球プレイヤーのほとんどは、素振りの効果は非常に大きいのではないかと。

 

ということで、卓球における素振りがいかに難しく、いかに重要かということでした。